ヤマキに関する様々な総体的疑問に答える質疑応答形式で、1つ1つひもときながらヤマキ像に迫ろうというものです。多角的に質問事項を想定し、興味深い事柄は随時追加していきます。

質疑応答の内容に、独断と偏見でカルト度合いを「」の5段階表記しました。「」表記の多いもの程、難度・専門度も高いといった、あくまで目安的なものです。(解答内容の不備な点は、お気づきの情報・解答等をお寄せ下されば幸いです。)

●カルトQ&A VOL.1(No.01〜)
●カルトQ&A VOL.2(No.11〜)
●カルトQ&A VOL.3(No.21〜)
●カルトQ&A 
VOL.4(No.31〜)
●カルトQ&A 
VOL.5(No.41〜
●カルトQ&A VOL.6(No.51〜)
●カルトQ&A VOL.7(No.61〜)
●カルトQ&A VOL.8(No.71〜)
●カルトQ&A VOL.9(No.81〜)

No.61/★★★★
ヤマキがOEM製造し1979年頃から日本国内販売された米国WASHBURN社のアコースティック・ギターに関して取り上げて下さい。


1979年10月開催の「'79楽器フェア」に照準をあわせ日本国内にもダイオンを通じて販売が開始されたものと思われ、アコースティックのみならずエレクトリック製品も同時発売開始されたことで、ダイオンとしては大きなセールス・プロモーションを得たと思われます。

ただし、アコースティック、エレクトリック併せると、Washburn社製品は50余りのモデル数を数えるにもかかわらず、Washburn社製品総合カタログの類は用意されなかった様で、プライス・リスト的あるいは単独モデル的な1枚もののリーフレットが確認できます。

アコースティックの基本モデルは、「D-シリーズ」と「F-シリーズ」に別れます。また、型番数字の後ろには「S」ないし「SW」が付き、「S」はトップ単板、「SW」はトップ単板に加えサイド・バックも単板のオール単板仕様を意味します。

先の質疑応答No.44でも若干触れていますが、 Washburn社のモデルと比較すると、ヤマキ「Y-40D、Y-50D、Y-60D、Y-70D」は、Washburn社「D-60SW、D-62SW、D-64SW、D-66SW」に相当するであろうと思われますが、一部仕様スペックが異なる様です。
(オバンコール←→マホガニーなど)

また、ヤマキ・ブランドによる「D-50SW」(S/B:ローズウッド)というモデルが存在することから、ヤマキ・ブランドで先行発売していた一時期、国内販売価格に併せた「D-40SW、D-50SW、D-60SW、D-70SW」という一連のモデルが存在するものと思われます。

これら先行モデルとおぼしきにWashburn社輸出仕様と同じシリアルとしての製造通しナンバーが打たれていることから、'78年頃より新たにこの通しナンバー的なシリアル法が導入されるキッカケとなった可能性も含まれます。

発売当時の価格は、D-60SW(5万円)、D-62SW(6万円)、D-64SW(7万円)、D-66SW(8万円)となっていますが、翌1980年3月1日より価格改定を行っており、D-60SW(6万円)、D-62SW(8万円)、D-64SW(10万円)、D-66SW(12万円)と極端な値上げとなっています。

同時期は、対米為替レートも円安へのより戻し期であり、1979年よりの第二次オイル・ショックによる資材高騰の影響というだけで、はたしてこれだけの価格改定の理由になり得るのかどうか不明です。

同時期、既にアコースティックギターの値引きが横行していた業界事情を踏まえれば、値引率を高めた卸販売へとシフトするため、第二次オイル・ショックというタイミングを得て定価格を高めに改訂したというダイオン側の意図が含まれているのかも知れません。

「D-64SW」の仕様スペックは、TOP:スプルース単板、S&B:オバンコール単板、トライアングル・メイプル・ポジション、ダイヤカット付マホガニーネック、ワッシュバーン・スタイル・ローズブリッジであることから「D-60SW」も同等の仕様と思われます。

No.62/★★★★
1975年頃購入したヤマキF-130ですが、シリアル・ナンバーらしきが「11476」とあり、当カルトQ&Aにあるシリアル解析とは該当しません。何故でしょうか?


ご質問のように1975年〜1976年頃のヤマキ・ギターには、当カルトQ&A(No.1)シリアル分析に該当しないナンバーのものが検体として僅かながら見受けられます。

理由は定かではありませんが、この1975年〜1976年頃にかけてフォーク&ウェスタンギターの製造需要に対し、ヤマキ楽器、信濃楽器両社での生産に加え、新たな製造サポート・メーカーの参画によるものと思われます。

その理由として、恐らく'74年頃から生産過剰と金融引締めによる倒産も相次いだ楽器業界事情等により、生産バランスを調整する意味合いが含まれていると想像します。

今件と他の検体シリアルを含めると、「121775」「122875」「11476」「20676」等が見受けられ、おおよそ「下2桁が製造年」と思われますが、その他が製造月日か生産本数なのか不明です。

また、今件のようなシリアルは、検体として得ているヤマキ・ギターでは「F-130」と「FP-20」の2モデルしか判明しておりません。しかし、可能性として「F-120」「FP-30」「FP-50」も含まれます。

最終的な推測になりますが、検体のネック・ヒールの姿・作りがクラシック・ギターを思わせることも含め、クラシック専門メーカーである小平楽器で製造されたものではないかと推測します。

同時期に小平楽器から生産不良のヤマキ・ギターを直接購入された地元情報によるものや、'78年より小平楽器がヤマキ・クラシック・ギターの製造協力をしていたことも含まれます。

小平楽器製を見極めるポイントとして、ボディ内型番スタンプの書体が「角張ったゴシック体」という他のヤマキ製品と異なった書体スタンプである特徴が伺えます。

この推測から該当する小平楽器製として、「F-120」「F-130」、「FP-20」「FP-30」「FP-50」、「BP-20」「BP-30」「BP-50」が挙げられ、特に「FP」「BP」シリーズに関しては、これらシリーズが共にクラシックギター型ボディである点でも、クラシックギター専門製造メーカーとしての小平楽器に製造を委託したという経緯が推測出来ますが、冒頭シリアルを検体上から確認した訳ではありません。

※小平楽器は国内有数のクラシック専門ギター・メーカーで、現在ヤマキとは一切関係がありませんので、今件のヤマキ・ギターに関連した連絡等は迷惑行為と認識の上ご配慮下さい。

No.63/★★★
1978年にはヤマキ、シナノの両ブランドもヤマキ・ブランドの統一化を図ったとありますが、小平楽器のヤマキ・クラシックギター製作協力というダイオン・グループ参画も含めどういう意図があったのでしょうか?


直接的要因は、信濃楽器工業の倒産と思われますが、ダイオンの販売路線を伺うと、時代的な流れもあるのでしょうが、フォーク&ウェスタンのブランド力に比べクラシックギターの販売力・マーケット力が弱かった事情を考慮したものと思われます。

ダイオン・グループ傘下のマタノ・ギター(名工ギター)が、'81年倒産後にロッコーマンのテコ入れで見事に再生したことなどを踏まえると、総じてダイオンはクラシック部門の国内販売網が弱く、輸出に関しても基地局としての支局、合弁企業等もなく販売基盤が弱かった様に見受けられます。

No.64/★★★
1970年代後半頃のものと思われるヤマキ・ブランドのギルド・モデルを所有していますが、どういう位置づけのモデルなのでしょうか?


管理者たるいち個人の資料範囲はある程度限定されますが、ヤマキ・ブランドのギルド・モデルが掲載されているものは見当たりません。

通販&直売ブランドのCANYON(キャニオン)やTOMSON(トムソン)向けヤマキ製ギルド・モデルは販売対象が限定されることから、本来カタログ・ラインにないギルド・モデルをヤマキ・ブランドで各小売店向けに製造・販売されたものと思われます。

カタログ等に見受けられないのはそうした位置づけのものであったのかも知れません。

モデル名の「D-N」や「A-S」に関しては、より比較可能な検体が見当たらないため正確な判断は難しいです。Dは12弦仕様、Aは6弦仕様、Nはナチュラル仕上げ、Sはサンバースト仕上げの略・・・いずれも推測です。

No.65/★★★
ヤマキで製造されていたFOLEX(フォレックス)ブランドが後に黒沢楽器に製造変更されたとありますが、どういう経緯の変更なのでしょうか?


Folex(フォレックス)は、'71年4月頃の仕様変更期より製造元をヤマキ楽器より変更され、質疑応答No.10では黒沢楽器(松本工場)と推測していますが、松本のマツモク工業、木曽福島の木曽鈴木のボディまたはネック加工品を黒沢楽器がアッセンブルしていた可能性も含まれます。同時期のForks(フォークス)も連携変更されていると推測されます。

当初、Folex(ワールド楽器:旧・全音楽器商会/東京)、Forks(栗林楽器/大阪)、Hamox(ハモックス:ダイオン/大阪)の3ブランドは、共に元“全音”つながりという連携で東西にわかれ販路を拡張されていたと思われますが、大阪ダイオン(ダイオン本社)が新たに東京ダイオンを設立し独自に東西の販路拡張を目指したことで、3社の関係に変化が生じたのかも知れません。

興味深い一例として、 1969年5月頃になると、Folks、Folex、Hamoxを名称統一し、Yamaki(ヤマキ)フォークギターを発売する、と名目上なっていたようですが、実際にはYamakiに統一されることなく各社Folks、Folex、Hamoxブランドを引き続き販売しています。

ヤマキ楽器製品の販売母体のダイオンあるいは全音大阪支店のある関西、一方で東京ダイオンや全音楽譜出版社のある関東にあって、栗林楽器(大阪)、ワールド楽器(東京)の脱ゼンオンあるいは楽器卸販売業としての独自路線の模索によるものかも知れません。

No.66/★★★
ヤマキで製造されていたHAMOX(ハモックス)ブランドが後に八潮楽器に製造変更されたようですが、どういう経緯の変更なのでしょうか?ヤマキ期のHAMOXブランドについても詳細を教えて下さい。


1971年頃になると、Hamoxブランドは八潮楽器(代表取締役:町田宇三郎)に製造委託されている様です。と同時にダイオン・グループの傘下となった様で、それを裏付けるように、ダイオン・グループの輸出会社であるグレート・ミュージックの役員に町田氏が加わっておりダイオン・ファミリーの全容も伺えます。

さて、先のNo.65の質疑応答にある様に、新「Yamaki」ブランドの登場により、商標権をもつダイオン扱いのHamoxブランドは曖昧な位置づけであったと思われ、八潮楽器に委ねると同時にダイオン・グループへ参画を図った格好ですが、東京ダイオンという関東および以北エリアの供給源として、楽器供給メーカーとして関東(埼玉県)に所在することが考慮に含まれているのかも知れません。

【ハモックス】商標出願:1967(昭和42)年4月12日
株式会社ダイオン:大阪市浪速区元町5の358
代表者:寺平安幸
※寺平「太一」となっていない所を見ると、「安幸」から「太一」への改名使用は渉外的なもので戸籍上のものではないと思われる。

No.67/★★★
当サイトTOPページでも取り上げられているメープル仕様WシリーズのW500ですが、TOMSON(トムソン)ブランドで外見上ほぼ同等品としてGW-650という製品がありますが、同じヤマキ製品でしょうか?


トムソン・ブランドの製品構成の中でもヤマキ楽器は、ハイクラス製品をOEM供給しています。価格帯で見ると5万円以上をヤマキ楽器、未満をすがの楽器、あるいは木曽鈴木バイオリン社などがサポートしていた様です。

ご質問のGW-650は、型番がら察するに6万5千円相当製品と思われますので、ヤマキ楽器が製造した製品と思われますが、製品詳細を検討するとすがの楽器製造品と思われます。

ヤマキW500と異なる外見上の違いは、ヘッド装飾、ネックブロック、センター・ストリップ、ボディ内ラベルなどの形状の違いが見受けられます。特にボディ内ラベルは、すがの楽器仕様ラベルの様で、同仕様ラベルには全てすがの楽器の名称が記載されている様です。

センター・ストリップの形状もヤマキ系かまぼこ状ではなく、すがの系すみ落とし形状が見て取れますので、すがの楽器の可能性が高いと思われます。この他、キャニオン・ブランドでも上記特徴から同様の判断が可能と思われます。

実機を比較検討した訳ではありませんが、外見上の仕様印象からもヤマキW500とほとんど変わりません。しかし、ブランド・スタンプやシリアルなどヤマキ楽器製造と特定させる要素が見受けられない事から、総合するとラベル記載の通りすがの楽器製と推論するもので断定するものではありません。

No.68/★★★★
(その1)1969(昭和44)年頃製造されたヤマキF-115のサウンドホール内ラベルには、古い仕様のラベルとともに質疑応答No.1のシリアル法とは異なるシリアルがあります。この時期のシリアル法を追記して下さい。


1969年はヤマキ・ブランドのフォーク&ウェスタン・ギターがリリースされた年ですので、初期ラベルのシリアル法に関してとなります。この初期ラベルは'70年初頭までしか使用されず、初期シリアルは'69年12月初旬までしか見受けられません。

検体も極めて少ないですが、ヤマキ・ブランド以前に、'68年リリースされたハモックス・ブランドがありますので、ハモックスを含めシリアル法を総合的に検討した方が良いかも知れません。

6桁のシリアル法となっており、40XXXXとした4で始まる下5桁の数字が異なる仕様です。その後のヤマキ・シルアル法を考慮すると、製造年月日を示していると捉える事も可能ですが、ハモックスと複合的に判断すると「4」が「1969年」、下5桁が製造本数を示すものと思われます。

ヤマキ最初期を示す検体箇所として、ネック・ヒール部が挙げられるかも知れません。最初期のシリアル検体では、ヒール部がネックと平行した3層構造となっており、この後すぐにネックと対向した3層構造に変え構造的に改善を加えている仕様が伺えます。

僅かではありますがヤマキ・ブランドの検体上の最初期のものとして「400922」〜「401826」、ハモックス・ブランド上では「401428」〜「401456」を確認してます。

No.69/★★★★
(その2)1969(昭和44)年頃製造されたヤマキF-115のサウンドホール内ラベルには、大きく「M」とスタンプされていますが、同時期の同じもので大きく「Y」とスタンプされたものもありますが、この「M」「Y」の意味するものは何でしょうか?


ラベルに押印される「M」「Y」印ともに正確に何を意味しているかは不明ですが、型番と同色のスタンプであることから、ヤマキ楽器内で同一者による検査時の作業と推測します。

'69年12月頃から楕円スタンプによる製造年月日を押印するシリアル法に変更されてからも、「M」「Y」印とも'71年10月頃まで継続されており、それ以降は無くなります。

理由は定かではありませんが、同時期より信濃楽器がヤマキ・ギター製造のサポートを始める事により検査体制を変えたのかも知れません。(※質疑応答No.40参照)

「M」「Y」印に関しては、紫、赤の二色が確認されますが、退色による違いか、色分けに意味合いが含まれているか不明です。M者とY者により最終検査の際、ラベルに型番とともに検査者印として押印されたものと推測しています。

また、M社とY社という別の見解も考えられ、Y社が「ヤマキ楽器」とすれば、最初期からM社という製造サポート・メーカーの存在が考えられます。

その際のM社の候補としては、全音グループつながりとしての「美鈴楽器」「美家寿工業」など推測出来ますが、「美家寿工業」のみ未確認ながら、可能性としてはかなり低い様に思われます。

No.70/★★★★★
ヤマキ楽器の現状をご存じでしたら教えて下さい。


当サイト開設時にはヤマキ楽器はまだ操業を続けておりましたが、残念ながら数年前に自身も知らぬままその幕を閉じた様です。
(※2007年4月20日の時点での状況判明に基づくもので、以降は未確認)
かかる理由は様々な事情もあり、了承を得ぬままお伝えすることは出来ませんが、ヤマキ楽器の歴史に終止符が打たれたのは事実です。

当サイト開設とともにヤマキ・ギターの復活を希望される声も多数頂きましたが、ヤマキ復活劇はその血脈を受け継ぐべき志の熱き者の手に委ねられたということでしょうか。

現在、ネット検索で判明するヤマキ楽器の連絡先も過去の古い情報のままのため連絡は取れません。(※連絡を取られた方もいないとは思いますが)


●カルトQ&A VOL.1(No.01〜)
●カルトQ&A VOL.2(No.11〜)
●カルトQ&A VOL.3(No.21〜)
●カルトQ&A 
VOL.4(No.31〜)
●カルトQ&A VOL.5(No.41〜
●カルトQ&A VOL.6(No.51〜)
●カルトQ&A VOL.7(No.61〜)
●カルトQ&A VOL.8(No.71〜)
●カルトQ&A VOL.9(No.81〜)


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送