ヤマキに関する様々な総体的疑問に答える質疑応答形式で、1つ1つひもときながらヤマキ像に迫ろうというものです。多角的に質問事項を想定し、興味深い事柄は随時追加していきます。

質疑応答の内容に、独断と偏見でカルト度合いを「」の5段階表記しました。「」表記の多いもの程、難度・専門度も高いといった、あくまで目安的なものです。(解答内容の不備な点は、お気づきの情報・解答等をお寄せ下されば幸いです。)

●カルトQ&A VOL.2(No.11〜)
●カルトQ&A VOL.3(No.21〜)
●カルトQ&A VOL.4(No.31〜)
●カルトQ&A VOL.5(No.41〜)
●カルトQ&A 
VOL.6(No.51〜)
●カルトQ&A VOL.7(No.61〜)
●カルトQ&A VOL.8(No.71〜)
●カルトQ&A VOL.9(No.81〜)

No.01/★★★★★
ボディ内ネックの付け根付近に6桁のシリアルナンバーが確認できるのですが、製造年の判断が付きません。シリアルナンバーから製造年を特定できるものでしょうか?


製造当事者をもってして、未だ不確定要素の最たるものがシリアルナンバーです。改めてシリアルナンバーというもの自体の持つ意味を再考しつつの中間報告です。

そもそも我が国に於いての楽器におけるシリアルナンバーの表記とは、物品税法(正確には楽器物品税が創設された1937年8月以来)が関与していると思われます。簡単に言えば、税を納めるに当たり「何年何月何日、○○という品目を××数量製造しました」という表記を単純記号化・目視化したものであり物品税に関わる納税側の便宜上の記号化と思われます。

ただし、厳密に言えば物品税法以前の洋楽器製造の黎明期以来、製品に製造ナンバーを付ける慣習はあったので、両義的に捉えるのが良いと思われます。

ヤマキを検証すると、'60年代より'72年頃までのボディ内にラベルをもつモデル(便宜上、ラベル・モデルと略称)では、ラベル内に「型番」と「製造年月日」を示すスタンプがされているのが通例で、目視上製造本数を示す表記は見当たりません。

ボディ内にラベルをもたない手工品クラスのモデル(便宜上、手工モデルと略称)では、製造証明書を兼ねたタグに該当内容が表記されているようです。翌'73年頃になると、ラベル・モデルにはスタンプ表記中の年月日が省略される様になり、おそらく'75年前後頃から新たな5桁〜6桁のナンバーによるネック・ブロックへのスタンプへと変化していく様です。

現時点でこれらの年月日および5〜6桁のナンバー・スタンプは、シリアルナンバーというよりも製造ロットナンバーと推測します。

改めてネック・ブロックに見られる6桁のナンバーを考察すると、下1桁と下2桁の配列が31以上、下3桁と下4桁の配列が12以上見られない事から、下4桁はそれ以前のナンバー・スタンプを踏襲した製造「月日」であると推測します。「220425」であれば4月25日であろうと思われ、5桁〜6桁は、ヤマキ楽器が管理する製造ロットNo.22と推測します。現時点では不確定ながら「31」まで確認され、数字が少ない程そのモデル上の初期出荷品と推測します。

推論の結果として、製造ロットナンバーから製造年を特定するには、詳細なより多くの検体データとその関連性・法則性を見極める必要があると思います。

その後、'78年頃より通しナンバー的なシリアル法に変わります。この理由として、Washiburn社向けにOEM製造&輸出していたモデルの一部をダイオンがヤマキ・ブランドで'78年頃より日本国内販売し始めたことで、Washiburn社向けに採用されていた通しナンバー的なシリアル法に便宜的に統一した可能性が含まれます。

この通しナンバー的なシリアル法は、前年の'77年末よりリリースされたワルツ堂向けオリジナル・モデルにも既に採用されている点は見逃せない点かも知れません。

引き続き再考・検証中です。その他情報等お持ちの方々がおられましたら、投稿をお待ちしておりますので宜しくお願いいたします。

No.02/★★★
チューナー(弦巻き)にドイツ・シャーラー社製のものが付いていますが、オリジナル仕様でしょうか?


恐らく'72年頃のFシリーズ上級手工モデルから使用され始めたオリジナル仕様と思われます。

'74年中〜後期頃のちょうど「R」シリーズがリリースされてほどなく米グローバー社製ロトマティック・チューナーが加わり、両社チューナーの混在期を経て、'75年頃からはグローバー・ロトマティックに統一変更され、以降、中〜上級モデルの標準的仕様としてグローバー・ロトマティックが使用されている様です。

No.03/★★★
ヤマキDeluxeフォークギター「F-112」を所有してますが、ヘッド・デザインからボディ・フォルムに至るまで、外見上ヤマハFG-150と非常に似ていると思うのですが?

ボディ・フォルムは、あくまでマーティンを参考としてデザインされたとの事です。ヘッド・デザインは確かにヤマハの象徴としてのY字型と似ていて、どちらかと言えばブーメラン型に近いY字型をしています。

総合的には、ダイオンとの詳細な協議により決定されていた様ですが、この点に関しては、寺平氏が所長として在籍していた全音ギター製作所・初のフォークギター「F-120」に良い答えが隠されていると思います。(※ウェスタン・タイプが先行して製造・発売された。)

この製品のヘッドは、ヤマキ・ヘッド・デザインの左右先端を僅かに「ハの字」型に斜めに落としたデザインとなっており、同時期の全音のエレキ・ブランドMorales(モラレス)の「M」字型を象徴させています。モラレス・ブランドのフォークギターの前身とも言えるこのモデルに、既にヤマキの原型が見られます。

No.04/★★★
おそらく'70年前後頃のものと思われる私の古いヤマキは、金属ナットと0フレット仕様でまるでエレキギターの様な仕様です。ブリッジには、ギブソン風のアジャスタブル可変ブリッジ仕様で、弦高が調整出来る様になっています。フォークギターにしては、珍しい仕様ではないでしょうか?


両仕様とも、弦高を最低限に押さえる目的により導入・採用された仕様であるとの事の様です。

さて、ここからは私的推測になりますが、「弦高を最低限に押さえる」とのコンセプトは、非常にエレキ的な発想である様に感じます。また、フォークギター黎明期には多角的に仕様・構造が検討された時期でもあり、「弾き易さ」という観点から「弦高を低く抑える」というアプローチは数社製品中にも見受けられます。

寺平氏が全音ギター製作所の所長として、ZEN-ON Moralesブランドの代表的エレキギター「ES-300」「ES-500」といったモズライト・ベンチャーズ・モデルの人気コピー・モデルを開発・製造に関与しているであろう事は見逃せない視点であり、モズライトたる設計思想を優良なものとして取り入れたのではないかとの推測が考えられます。

事実「弦高を最低限に押さえる」とのコンセプトは、0フレットを取り入れているモズライトの設計思想の一部でもあり、エレキに明るい方から見れば一見してモズライトを連想する仕様で、弦高可変ブリッジはそれらの思想を補うには不可欠です。

先の質疑応答No.03で登場する「F-120」には、0フレット仕様ではないながらも既に可変ブリッジ仕様を取り入れています。

No.05/★★★
ネックのにぎりがマーティン系と言うより、ヤマハFGシリーズと非常に似ていていませんか?


ヤマハFGのネックグリップ形状は、最初期には質量を落とすためのスリム化に伴い僅かに三角形状寄りで、その後ユーザビリティの扱い易さを優先しU字ラウンド型へと変更され広く一般に知られる形状の様です。

このユーザビリティ(プレイアビリティ)の認識の起因を考えると、'60年代のフェンダー、ギブソン等がたどったラウンドUシェイプへの変更を受けての新たなる認識に基づくものとも考えられ、先行開発されたヤマハ・エレキ上での同様のユーザビリティの認識のもと統一されたものとも考えられます。

一方で、製造メーカーの多くは同時にエレキ・ギター製造メーカーであることから、単にエレキ・ギターの加工・製造工程を踏襲しているだけなのかも知れません。

ヤマキにおいては創業者・寺平氏の全音ギター製作所時代での経験が影響を与えてるのではないかという1つの推測が考えられます。

質疑応答No.03、No.04で触れた、ZEN-ON/F-120、Morales/ES-300、ES-500等において開発・製造に関与しており、F-120では、エレキの影響とも思える細身のにぎりのネックに丸みを帯びたU字ラウンド・シェイプが施され、プレイアビリティの良さを謳っておりヤマキ・ネックの原型が伺い知れます。マーティンにはないアジャスタブル・トラスロッドの使用が最も大きな意味・影響力を持つ様に思います。

こうした観点から見れば、両社ともエレキという共通したバックグラウンドに根ざしていたとも考えられますが、いずれもあくまで推測に過ぎません。

ヤマキは、モデルにより多少マーティン系のネックグリップ形状もあります。中〜後期にかけてはマーティンをより意識したためのバリエーションの一環とも思われますが、上記ネック形状はほぼ初期から後期に至るまで一貫しているヤマキの特徴的な一面でもある様に思われます。

No.06/★★
当時の定価(販売価格)って、型番などから正確に判るのでしょうか?


販売価格を型名・型番に当てはめているのは他の多くの国産楽器と同じところですが、ヤマキの場合、'75〜'76年頃を境に、それ以前とそれ以降との2パターンあります。

共に型番はスタンプで押印され、サウンドホール内のセンターストリップと呼ばれる割止め材上のメーカー名を示すブランドスタンプ付近に押印されるのが通例の様です。

ただし、まれにストリップ上に型番スタンプのないもの、またはネックブロック、トップ・ブレースにスタンプがあるものなど、モデルを特定しづらい例外的なものもある様です。

型番スタンプのないモデルには、輸出先国内で新規格のスタンプをされると言った輸出仕様も考えられますので、そうした見方も可能です。一例を挙げるならば、カナダでは'74年製ヤマキD-45タイプのモデル名が「AY355S」、D-41タイプが「AY353S」との報告があります。

さて、モデルにより若干異なる様ですが、おおよそ'75〜'76年以前は、販売価格の前に「1」が付く方式で、定価1万5千円であれば「115」、定価5万円であれば「150」、定価15万円であれば「1150」となります。

そして、'75〜'76年頃より販売価格自体が型番となり末尾に0が付く方式となり、定価1万5千円であれば「150」、定価5万円であれば「500」ないし「50」、定価15万円であれば「1500」となります。

'75年頃から適用されているモデルがあり、'76年前半には統一されたのではないでしょうか。価格調整を含めたマイナーチェンジであろうと思われますが、正確な理由は不明です。

No.07/★★★
塗装には、白濁色のくすんだ塗装ムラの様なものが出ていますが、どうしてでしょうか?


ヤマキ・フォークギター全般に非常によく見られる症状の様で、総じて評価は良くない様です。

ヤマキでは、下塗り、上塗りに異なる塗料を使用しています。下塗りにポリエステル、上塗りにポリウレタンです。下塗りのポリエステルは、目ヤセ、艶ビケを防ぐ目的で使用された様ですが、当時の塗料は、主剤と硬化剤の配合(温度による調合)により白濁する欠点があったとの事です。

ポリエステルは、湿度、気温、木材の水分含有量の管理が重要であり、経時変化に伴う白濁の多くは、このポリエステルの湿度による変化と思われます。あるいは、ポリエステル層とポリウレタン層のもつ化学塗料の収縮率の差が、保管状況に応じて著しく異なることで起こる症状とも考えられます。

白濁化した塗装自体サウンドには影響ありませんが、湿度が楽器を通じてサウンドにもたらす影響は大きいので、それまでのギター保管法の改善を考慮された方が良いでしょう。

No.08/★★★★★
ボディ内部からトラスロッドをアジャスト調整する方法って、もしかしてヤマキの発明ですか?


寺平氏により考案された発明であり、後の国産フォークギターの標準メカニズムともなったものです。

ヤマキにおいては'73年3月16日製造の手工品「1,100」第1号ではまだ導入されておらず、おそらく'73年後期頃を境に導入された新メカニズムと思われます。ヤマキによるダボ接ぎネック工法を活かし発案されたものではないでしょうか。

構造額的観点からは、ヘッド側でのトラスロッド調整法では、ダボによるネック・ジョイント部への負荷が大きく問題も生じやすい為、ダボ・ジョイント仕様対策としてボディ側での調整法に変えたとも考えられます。

寺平氏考案の優れた数々のアイディア・発明も、氏の確固たる信念に基づきパテント取得の手段を取らなかった事も、ギター産業界全体の成熟に大きく寄与していると言えるでしょう。

1985年にマーティンがアジャスタブル・トラスロッドを導入した際に同じ手法を採用しています。仕様の違いこそあれマーティンが逆にヤマキに習ったと言えるでしょう。

導入当時、マーティンはノン・アジャスト、その他はギブソンのアコギや一般的なエレキ・ギター工法によるヘッド側での調整法であった事を考えると、斬新なアイディアであり、フェンダー流のネック調整法をアコギに応用した様なメカニズムです。

No.09/★★★
アメリカではヤマキの評価は高いと聞きましたが、本当でしょうか?


本当かどうか真相は現在のところ解りませんが、アコースティックの本場アメリカで評価が高いと噂される日本製オールド・フォークギターはある様です。

ただし噂の根拠が、某ミュージシャンが使用していたといった範疇での曖昧な(明快な?)部分も含まれている様な気がします。

日本国内ではさほど人気はないけれども、アメリカでは評価が高いとされるモデルは実際にある様で、国内の発言等でも耳にすますが、特定のメーカーの特定の期間のモデルを指している様な気もします。

ヤマキの場合、ダイオンを通じ全般的に主にカナダに、そして一部欧州に輸出されていた事を考慮すると、北米を中心に当てはまる様な特定のモデルがあるかも知れません。

No.10/★★★
ヤマキ楽器製造による他社向けOEMブランドとか自社内サブ・ブランドとかってあるんでしょうか?


初期のOEM製品としては、国産初のエレキ・フォーク・ギターとして栗林楽器から'68年9月20日発売されたFolks(フォークス)があり、新開発された小型マイクを取り付けたエレキ・フォーク(現在のエレアコ)なるものと通常のフォークギターがありました。後の'71年4月頃には黒沢楽器(あるいは八潮楽器)に製造を代えた様です。

同時期にはFolex(フォレックス)もありますが、同じように'71年4月頃、黒沢楽器に製造変更された様です。

'68年9月には、Hamox(ハモックス)がダイオンより発売されていますが、初期の段階ではヤマキ楽器(あるいは信濃楽器)製造と思われ、'71年4月頃を境に八潮楽器(東京)に製造を変えている可能性があります。

他に'72年頃からのMarchis(マーチス)がありますが、中級品を境に上のクラスをヤマキ楽器が、下のクラスを信濃楽器(あるいは八潮楽器)が分担製造している様です。'76年後期以降にはCANYON(キャニオン)がありますが、価格帯別にヤマキ楽器と信濃楽器製造の2社分担製造が考えられます。

変わったところでは、ガットギター製造で有名な信濃楽器のフォークギターShinano(シナノ)があります。上記のOEMブランド同様、ラベルにある「YAMAKI MUSICAL INSTRUMENT」等の記載から、信濃楽器へのOEMと判断しがちですが、両社とも生産調整により不足分を供給し合っていた関係上、ラベルから単にOEMと判断するのは早計の様です。

いずれも上記に関して言えるのは、(黒沢楽器を除き)ヤマキ楽器、信濃楽器、八潮楽器の3社がダイオン・ファミリーと言える製造メーカーであった事が大きなキーポイントと言えそうです。

二光通販のブランドTomson(トムソン)の一部の機種にもある様です。OEM製品は、他にもあるのではないかと思われます。


●カルトQ&A VOL.2(No.11〜)
●カルトQ&A VOL.3(No.21〜)
●カルトQ&A VOL.4(No.31〜)
●カルトQ&A VOL.5(No.41〜)

●カルトQ&A VOL.6(No.51〜)
●カルトQ&A VOL.7(No.61〜)
●カルトQ&A VOL.8(No.71〜)
●カルトQ&A VOL.9(No.81〜)


 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送