ヤマキに関する様々な総体的疑問に答える質疑応答形式で、1つ1つひもときながらヤマキ像に迫ろうというものです。多角的に質問事項を想定し、興味深い事柄は随時追加していきます。

質疑応答の内容に、独断と偏見でカルト度合いを「☆」の5段階表記しました。「☆」表記の多いもの程、難度・専門度も高いといった、あくまで目安的なものです。(解答内容の不備な点は、お気づきの情報・解答等をお寄せ下されば幸いです。)

●カルトQ&A VOL.1(No.01〜)
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●カルトQ&A VOL.3(No.21〜)
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VOL.4(No.31〜)
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No.71/☆☆☆☆
ヤマキのネックブロックに見られる梁型はヤマキ独自型といえるのでしょうか?


フォーク&ウエスタンというカテゴリーで国産ギターを拝見する限り、ヤマキ独自型といえるかも知れません。

しかし、広く国産ギターという観点から見ると、クラシックギターに同じ様な梁型ネックブロックを見ることが出来ます。

検体から拝見すると1960年代中期以降頃のごく一部の国産クラシックギターに導入されており、一見ヤマキ型と同じと思われるものから、類似的なものまで、わずかながら検体として確認しています。

それらがネックブロックを含めた後付の補修なのか、製作段階から考慮されたものかは、直接検体を拝見している訳ではなので断言できませんが、おそらく後者の理由による意図的な形状と思われます。

検体がゼンオン系列のメーカーでない事から、ヤマキ以前から梁型ネックブロックが存在しており、ヤマキは1972〜73年頃と後からの導入と言えます。

別の観点から見れば、田原良平氏のジャンボ・ブランドのネックブロック自体が梁型の類型とも言えますので、むしろ田原ジャンボに影響され導入に至ったとする見解も可能と思われます。

No.72/☆☆☆
国産ギターにはボディのバックのみならずトップ側にも僅かにアーチをかけるものがある様ですが、ヤマキ・ギターは同様の仕様らしきものがあるのでしょうか?


ヤマキ・ギターを全て精査した訳ではありませんが、ヤマキの基本的設計は共通しており、ボディ・トップにアーチを持たせるコンセプトのギターではないと思われます。

例えば12弦仕様のヤマキ・ギターでは、中古であればテンションでトップがふくらみがちですが、検体が完全フラットであることから、トップにアーチを持たせる設計思想はないと思われます。

仮にトップ甲版のブリッジ付近にアーチ感があるとすれば、長期に渡る弦のテンションによる僅かな変形と思われます。

銘器と取り扱われるヴィンテージ・マーティンなどにも散見される症状ですので、演奏に支障がなければ特に問題ないです。

No.73/☆☆☆☆☆
ヤマキ・ギターの1960年代後期の初期手工ギターには、非常に変わった装飾的なブリッジ・デザインのものがあり、同時期の国産ギターと比較しても非常に個性的ですが、ヤマキ・オリジナルと言えるものでしょうか?


ヤマキ・ギターのリリース間もないヤマキ初期の手工上級モデルに見受けられる実に個性あふれる装飾的ブリッジでヤマキを更に印象づけるデザインですが、ヤマキ流にアレンジしたというのが実情ではないでしょうか。

その元デザインとなったと思われるのが、アコースティックギターでは異色の存在のリッケンバッカーと思われます。

リッケンバッカーは1958年〜1970年頃までにアコースティックギター・シリーズをリリースしています。エレキギターほど人気もなく認知度を含め極めてレアな存在ではりますが、当時のカタログにはその全容が写真掲載されています。

そのリッケンバッカー・アコースティックギター・シリーズ中、「モデルNo.385」のブリッジ・デザインが非常に酷似しています。

仮にリッケンバッカーが元デザインとすると、ダイオンの寺平太一氏のアメリカン・ギター・マーケットに関する幅広い情報力が生み出した産物のような気が致します。

No.74/☆☆☆☆
ヤマキの創設者・寺平一幸氏が最初にギター製造に関わったのは、林楽器製造(株)のグローリヤ・ギターとありますが、グロリア・ギターではないですか? また、寺平氏が関わったグロリア・ギターに関して解る範囲で教えて下さい。


グローリヤ・ギターとは、製造元の林楽器製造(株)の常務取締役だった栗林国雄氏が、当時そのように呼んでいたと記載されている資料中の呼び名を拝借しておりますが、ご指摘の様に正確にはグロリア(Gloria)ギターです。

戦後ギター・ブームのピーク時に林楽器製造を除く信州メーカー総数/月産5,000台をよそに林楽器一社だけで月産6,000台をも生産していたと語られ、戦後混乱期のギター・ブーム下とはいえ尋常ならぬ生産量を誇り、同時期のギターの代名詞的存在となっています。

一方でその生産量から粗悪なギターとの評価もあり、「グロリア80号」などは量産目的の粗悪な小型ギターであるとか、ギターの知識もおぼつかないゆえ、ネックジョイントが12フレットではないコピー元すら不明なギター・・・などなど関連資料は限定されますがグロリア・ギター自体に良い評価は見受けられません。

一方で極めて私感ながら、独自発想によるオリジナルな構造原理ゆえに興味深い応用技術も感じられ、未成熟ながら不思議なギターです。

グロリア・ギターが何故それほどの生産量を誇れたかに関しては、現在に至るまで分析・解明されてきてはおりませんが、実はそれなりの明白な理由があります。機をあらためて触れたいと思います。

No.75/☆☆☆☆
月産5,000台あるいは6,000台をも誇ったとされるグロリア・ギターですが、現在見かける機会がまったくないのは何故でしょうか?


まず、戦後混乱期のギター・ブームであった事を念頭におかないと判りにくい様に思います。

グロリア・ギターに限らず戦後ギター・ブーム下には様々なブランドのギターが便乗生産されましたが、ブームが過ぎると一気に感心を失います。1960年代後期から70年代にかけてのフォーク・ブームのリアル世代でも同様の傾向が伺えます。

終戦後は貧しい生活環境のもとで運良く保存に適した境遇を得た、例えば倉や物置の中に置き去りにされていた様なギターのみが今日僅かに日の目を見るのであろうと思われます。

また、終戦後の貧しい復興期でもあるギター・ブーム時代は、ハトロン紙に包まれただけのギターをたくさん手に吊した行商人が売り歩いていた今では想像も付かない様な状況でもありました。

楽器店にてギター・ケース付きで購入される様な富裕層が少なかった状況や時代背景がことのほか風化を一層早めた結果・・・なのかも知れません。

No.76/☆☆☆☆
ヤマキのダブルネック・アコースティックギターを入手しました。大変レアなギターだと思いますが詳細を教えて下さい。


日本でダブルネックのアコースティックギターをリリースしたのは、国内ではヤマキ楽器が最初で、1975年10月開催の楽器フェア(10月10日〜12日)でニュー・モデルとしてデビューしました。

サウンドホールが丸いダブル・ホール型と大きなオーバル型のシングル・ホール型の2機種があり、共に価格は10万円でした。

楽器フェア途中で既に20本程の注文があったとされますが、20〜30本程のオーダー後は製造が継続されなかった様で、同モデルが掲載されたカタログらしきも見受けられません。

当時は非常に珍しい個性的なギターだったと思われますが、影響される存在が既に海外に存在していたのか、あるいは当時のエレキギターからの影響なのかは不明です。

ダブルネックはエレキ同様、6弦と12弦のコンビネーションですが、それだけでも弦の総テンションは相当のものですので、個人的にもその構造や設計思想的なものには非常に興味関心を覚えるところです。

No.77/☆☆☆☆
質疑応答のNo.28で回答されているプティ・シリーズのカタログ・ラインにない「BP-80」「BP-100」に関して何か情報はないでしょうか?


該当の検体を未だ拝見した事がないので、ある程度の推測も含まれますが、プティ・シリーズは展示品サンプルとして「BP-80」「BP-100」、「FP-80」「FP-100」が製造され、同時期バッファローヘッドの「B-70」「B-100」も製造されていることは間違いないと思われます。

カタログ・ラインとして既にリリースされていたモデルが「20」「30(40)」「50」だった事を踏まえれば、前記No.76で触れた1975年10月開催の楽器フェア向けに「新製品」として位置づけられており、展示サンプル品として各種数台は製造&展示されていると思われます。

最上級モデルの「F-1200」も数台現存を確認できた事からすれば、いずれ国内ギター・マーケットに出てくると思われますが、展示品的プロトタイプとすれば現存数を含め希少モデルである事は間違いないと思います。

No.78/☆☆☆
ダイオンがエレキギターに参入すべくダイナ楽器で製造されたジョーディー(JooDee)ブランドですが、イギリスのジェイディー(Jaydee)ブランドを真似たのではないですか?


ジョーディー(JooDee)のリリースは、ダイナ楽器設立と同時期の1975年8月ごろで、一方のイギリスのジェイディー(Jeydee)ギターは、設立が1977年ですので、時系列からしてもジェイディーを真似たものではないと言えます。

しかし、確かに良く似ています・・・。

No.79/☆☆☆☆
ヤマキの「幾山(キザン)」ブランドでは、武田信玄の号である、と紹介されていますが、法名(戒名)の「機山(キザン)」の間違いではないでしょうか?


武田信玄に関して詳しくないので、情報を精査するとご指摘の通りです。しかし、「幾山(キザン)」ブランドがリリースされる際、当時の関連情報誌では「幾山(キザン)」は武田信玄の号である、と紹介されています。

ここからは推測になりますが、寺平一幸氏は武田信玄の法名「機山」と「幾山」を掛詞の様にブランド名としたのではないでしょうか。

そもそも“山の木が喜ぶ”とした「山幾(ヤマキ)」は「幾山(キザン)」の逆詞になっている点や、寺平一幸氏が武田信玄を崇敬されていた可能性を含めれば、「山幾(ヤマキ)」の背景に武田信玄あり・・・と想像するのも一興でしょうか。

No.80/☆☆☆
ヤマキ・ギターでギブソンJ-200のようなジャンボ・サイズのギターを見かけませんが、存在するのでしょうか?


非常に注目すべき点かも知れませんが、ヤマキ楽器ではご質問にある様なジャンボ・サイズのギターは製造してないように思います。

これはどちらかと言うと、商品の方向性を決定づけていたダイオンの方針ではないかと想像しますが、ジャンボ・サイズが製品群にあるギブソン社やハープトーン社風モデルを製造しながらも、何故かジャンボ・サイズは製造していません。

プロト・タイプ的なもので製造された様子もないので、もし存在するとすればセンセーショナルな情報かと思われます。


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